キャベツやハクサイの葉に、水を含んだような小さな斑点が現れ、その後黒褐色の不整形な病斑へ広がってきたときは、黒斑細菌病を疑います。黒斑細菌病はアブラナ科野菜に発生する細菌性の病気で、長野県でもキャベツ・ハクサイ・ブロッコリーなどで問題となっています。
典型的には、水浸状の小斑点から始まり、病斑が拡大・融合して黒褐色〜灰褐色の不整形または多角形病斑になります。古い病斑は破れやすくなることがあります。
見た目が黒斑病に似ることがありますが、黒斑病は同心円状の輪紋やすす状のかびが見分けポイントです。ただし、実際には外観だけで区別しにくい場合もあるため、典型症状はあくまで判断の目安として扱います。
黒斑細菌病の基本情報・早見表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 病名 | 黒斑細菌病 |
| 原因 | Pseudomonas属の細菌による病害 |
| 主な対象 | キャベツ、ハクサイ、ブロッコリー、ダイコンなどのアブラナ科 |
| 初期症状 | 葉に水浸状の小さな斑点 |
| 進行症状 | 黒褐色〜灰褐色の不整形・多角形病斑、病斑の融合、古い病斑の破れ |
| 主な伝染源 | 被害残さ、汚染種子など |
| 広がりやすい条件 | 降雨、強風雨、葉の傷、害虫食害、連作 |
| 防除の基本 | 発病株の除去、残さ処分、輪作、健全種子、雨よけ・排水改善、害虫防除、必要に応じた登録農薬 |
黒斑細菌病の見分け方・特徴

黒斑細菌病では、最初に葉へ小さな水浸状の斑点が現れます。水浸状とは、葉の組織が水を含んだように半透明〜濃色に見える状態です。
病斑は次第に拡大し、黒褐色〜灰褐色へ変化します。複数の病斑がつながると、円形ではなく不整形または多角形の壊死斑に見えることがあります。
さらに古くなると病斑部の組織が弱くなり、破れて穴があくことがあります。虫食いだけに見える場合でも、その周囲に黒褐色の病斑が残っていないか確認します。
症状が出やすい場所

黒斑細菌病では、まず下葉・外葉を中心に確認します。葉面の小さな斑点は初期には目立ちにくいため、雨のあとや周囲で発病株が見つかったときは、葉を近くで観察します。
- 下葉・外葉:水浸状の小斑点や黒褐色病斑がないか
- 葉の表:病斑が拡大・融合していないか
- 葉柄・茎:暗色の病斑が出ていないかもあわせて確認する
育苗中の苗にも発生することがあります。長野県の研究では、苗の初期病斑は他の病気や生理障害と識別しにくいことが指摘されています。
黒斑細菌病と黒斑病の違い

| 比較 | 黒斑細菌病 | 黒斑病 |
|---|---|---|
| 原因 | 細菌 | 糸状菌 |
| 初期 | 水浸状の小斑点 | 褐色の円形〜類円形病斑 |
| 病斑の形 | 不整形・多角形へ広がりやすい | 円形〜類円形が目立つ |
| 輪紋 | 典型的な特徴ではない | 同心円状の輪紋が見られる |
| すす状のかび | 見られない | 病斑上に見られることがある |
黒斑病では、病斑に同心円状の輪紋やすす状のかびが見えることがあります。黒斑細菌病では、水浸状の斑点から不整形・多角形の病斑へ進むのが典型です。
ただし、症状が進んだ葉では外観が似る場合があります。農研機構・長野県の研究でも、病斑だけでは識別が難しいケースがあるため、画像だけで確定診断するものではありません。
見つけたら最初に確認すること

黒斑細菌病らしい斑点を見つけたら、病斑だけでなく、その株が置かれている条件も確認します。
- 水浸状:初期病斑が水を含んだように見えるか
- 病斑の形:不整形・多角形に広がっているか
- 傷口:強風雨、管理作業、害虫食害による傷がないか
- 同じ畝:周囲の株にも同様の斑点が出ていないか
発病株が複数ある場合は、雨滴などによって周囲へ広がっている可能性があります。特に大雨や台風のあと、葉が傷んだときは早めに見回ります。
黒斑細菌病が発生しやすい条件
雨や強風雨が続く
黒斑細菌病の病原細菌は、降雨によって周囲へ広がります。長野県の研究では、発病苗を本圃へ植えると、降雨によって周辺の健全株へ二次伝染することが確認されています。
葉に傷がある
病原細菌は気孔や水孔のほか、傷口からも侵入します。強風雨による傷、管理作業で付いた傷、害虫の食害痕があると発病を助長することがあります。
葉を食害するアオムシやコナガなども早めに対処し、傷を増やさないようにします。
連作している
被害残さは次作の伝染源になります。茨城県の耕種的防除資料では、黒斑細菌病が多発した圃場では2年以上アブラナ科以外の作物で輪作する方法が示されています。
家庭菜園でできる黒斑細菌病対策
発病葉・発病株を早めに取り除く
発病が目立つ葉や株は、周囲への伝染源にならないよう早めに取り除きます。抜いた株や被害葉は畑の周囲へ放置せず、適切に処分します。
被害残さを畑に残さない
栽培終了後の被害残さは、次作の伝染源になる可能性があります。発病した葉や株を畑へ残したままにしないことが大切です。
アブラナ科の連作を避ける
多発した場所では、アブラナ科以外の作物を入れて輪作します。公的資料では2年以上の輪作が一例として示されています。
雨よけ・排水改善と適正な肥培管理
雨よけ栽培や排水改善で、葉が長時間濡れる環境を減らします。また、肥料切れや過度な窒素施用を避け、株を健全に育てることも重要です。
健全な種子・苗を使う
黒斑細菌病は種子伝染することがあります。信頼できる種子を使い、育苗中に疑わしい斑点が出た苗は本圃へ持ち込まないようにします。
農薬を使う場合の注意
黒斑細菌病には、キャベツやハクサイなどで登録のある農薬があります。ただし、作物・製品によって使用方法、使用時期、使用回数などが異なり、登録内容は変更されることがあります。
この記事では固定の商品名・希釈倍率・使用回数を一律には示しません。使用する場合は、農林水産省の農薬登録情報提供システムで育てている作物と「黒斑細菌病」への最新登録を確認し、必ず製品ラベルに従ってください。
黒斑細菌病になった野菜は食べられる?
黒斑細菌病で黒褐色の病斑や壊死、黄化、破れが広がっている葉は、品質が大きく落ちているため食用にしません。腐敗が併発している場合も利用せず処分します。
一方で、黒斑細菌病そのものについて「感染した野菜を食べても安全」と一律に断定できる国内公的な食品衛生資料は確認できませんでした。家庭菜園では無理に利用せず、発病株の除去と病気を広げないことを優先します。
予防と再発防止のポイント
- 水浸状の小斑点を早めに見つける
- 発病葉・発病株を早めに除去する
- 被害残さを畑に残さない
- 多発圃場ではアブラナ科の連作を避ける
- 健全種子・健全苗を使う
- 雨よけ・排水改善で葉の濡れを減らす
- 害虫食害や管理作業による傷を減らす
- 肥料切れと過度な窒素施用を避ける
- 必要に応じて登録農薬を適正に使う
よくある質問
黒斑細菌病の初期症状は?
葉にできる小さな水浸状の斑点が代表的です。その後、黒褐色〜灰褐色の不整形・多角形病斑へ広がります。
黒斑病との違いは?
黒斑細菌病は水浸状の斑点から不整形病斑へ進むのが典型です。黒斑病は円形病斑に同心円状の輪紋やすす状のかびが見られることがあります。ただし外観だけでは区別しにくい場合もあります。
黒腐病との違いは?
黒腐病は葉のふちからV字状に黄化し、葉脈が黒くなるのが代表的です。黒斑細菌病は葉面の小さな水浸状斑点と黒褐色の不整形病斑が中心です。
雨のあとに増えやすいですか?
はい。病原細菌は雨滴で広がりやすく、強風雨によって葉に傷が増えると感染しやすくなります。
種からうつることはありますか?
あります。種子伝染することがあるため、健全な種子と苗を使うことが予防の基本です。
何年輪作すればよいですか?
茨城県の耕種的防除資料では、多発圃場で2年以上アブラナ科以外の作物を栽培する方法が示されています。輪作だけで再発を完全に防げるわけではないため、残さ処分や雨よけなども組み合わせます。
農薬を使えば傷んだ葉は元に戻りますか?
すでに壊死した病斑や破れた葉が元の状態へ戻るわけではありません。登録農薬は最新の適用内容に従い、発病株の除去や環境改善と組み合わせて使います。


