ホウレンソウの葉に、輪郭がはっきりした淡黄色〜灰色の斑点が現れ、その病斑の中に小さな黒い粒が見えるときは炭疽病を疑います。初めは水がしみたような円形の小斑点ですが、やがて2〜10mmほどに拡大し、古くなると乾いてもろくなり、病斑部分が破れて穴になることがあります。
炭疽病は葉だけでなく葉柄や茎にも発生します。雨が多く葉が濡れやすい時期に広がりやすいため、病斑の見分けだけでなく、密植を避ける・排水を良くする・被害残さを畑に残さないといった予防が重要です。
ホウレンソウ炭疽病の基本情報・早見表
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 原因 | 糸状菌(かび)による病気 |
| 主な症状 | 水浸状の小斑点、2〜10mmの灰〜淡黄色病斑、病斑上の黒い小粒 |
| 古い病斑 | 乾燥してもろくなり、病斑部分が破れることがある |
| 発生部位 | 葉、葉柄、茎の地際など |
| 発生しやすい時期 | 春、初夏、秋雨期など。10〜25℃程度で発病しやすい資料がある |
| 広がり方 | 被害残さなどに残った病原菌から胞子が伝搬する |
| 対策の基本 | 連作回避、被害残さの処分、排水改善、密植回避、適正施肥 |
ホウレンソウ炭疽病の見分け方・特徴

見分けるときは「病斑の色と輪郭」「大きさ」「黒い小粒」「古い病斑の破れ」をセットで確認します。
- 初期:水がしみたような円形の小斑点
- 進行:2〜10mmほどの灰色〜淡黄色で輪郭明瞭な病斑
- 病斑上:小さな黒い粒が見える
- 古い病斑:乾燥してもろくなり、破れて穴が開くことがある
病斑が複数つながると大型化し、不規則な輪紋状に見えることもあります。ただし、黒褐色の強い同心円だけを見て判断するのではなく、淡黄色の明瞭な病斑と黒い小粒を重視します。
症状が出やすい場所

炭疽病は葉だけの病気ではありません。葉柄や茎の地際まで確認すると、診断しやすくなります。
- 葉:淡黄色〜灰色の病斑と黒い小粒
- 葉柄:褐色で細長い紡錘形の病斑が出ることがある
- 茎の地際:片側に淡褐色でややへこんだ病斑が出ることがある
- 外葉:症状が進むと垂れたり傷んだりすることがある
株元全体が水っぽく溶ける軟腐病とは症状が異なります。炭疽病では、まず葉や葉柄に現れる明瞭な病斑を探します。
炭疽病とべと病の違い

ホウレンソウでは、べと病も黄色系の病斑をつくるため混同しやすい病気です。病斑の境界と、葉裏の状態を確認します。
| 確認点 | 炭疽病 | べと病 |
|---|---|---|
| 病斑 | 灰〜淡黄色で輪郭が明瞭 | 初期は青白〜黄色で境界が不明瞭 |
| 黒い小粒 | 病斑上に見られる | 主要な診断点ではない |
| 古い病斑 | 乾いてもろくなり、破れることがある | 拡大して葉全体が黄化・枯死することがある |
| 葉裏 | 灰紫色の粉状かびは基本的な診断点ではない | 病斑裏に灰〜灰紫色の粉状かびが出ることがある |
「輪郭がはっきりした淡黄色病斑+黒い小粒」なら炭疽病を、「境界がぼんやりした黄斑+葉裏の灰紫色かび」ならべと病を優先して疑います。
見つけたら最初に確認すること

- 病斑の輪郭:淡黄色〜灰色の病斑の境界がはっきりしているか
- 黒い小粒:病斑の中に非常に小さな黒点があるか
- 葉柄:褐色の細長い病斑が出ていないか
- 周辺の葉:同じような小斑点が他の葉へ増えていないか
穴が開いていても、穴だけで害虫被害と決めつけないことが大切です。炭疽病では、病斑が先にでき、その部分が古くなって乾燥したあとに破れることがあります。
ホウレンソウ炭疽病が発生しやすい時期・条件
資料では、発病適温は10〜25℃程度とされ、春まきでは4〜5月、夏まきでは7月上〜中旬、秋まきでは9月下旬〜10月中旬に発生が多い例があります。タキイ種苗の資料でも、春は4月から発生して5月にピークを迎え、6月下旬〜7月中旬や、秋雨が始まる9月中旬以降にも増えるとされています。
雨や葉濡れが続くことに加え、密植、排水不良、窒素肥料の多用なども発病を助長します。寒冷地でも、春〜秋の雨が続く時期は葉をこまめに確認します。
家庭菜園でできる炭疽病対策
被害葉と残さを畑に残さない
病原菌は被害残さとともに残り、次の感染源になることがあります。病斑が増えた葉や栽培後の被害残さは畝に放置せず、地域のルールに従って処分します。
密植を避けて葉を乾きやすくする
厚まき・密植を避け、適切に間引いて風通しを確保します。ホウレンソウの育て方で紹介している株間を目安に、葉が重なりすぎない状態を保ちます。
排水を改善し、過湿を避ける
水はけの悪い畝では発病しやすくなります。高畝や排水溝を利用し、雨後に水が長時間たまらないようにします。可能であれば雨よけも予防策の一つです。
肥料を効かせすぎない
窒素肥料の多用で葉が軟弱に茂ると、風通しも悪くなります。多肥を避け、適正量で育てます。
農薬を使う場合の注意
農薬登録は追加・変更されることがあります。炭疽病に農薬を使用する場合は、農林水産省の「農薬登録情報提供システム」で、その時点のホウレンソウ・炭疽病への登録を確認してください。対象作物、病害名、使用時期、使用回数、希釈倍数・使用量、収穫前日数など、製品ラベルの条件を必ず守ります。
炭疽病が出たホウレンソウは食べられる?
病斑が出た葉は品質が落ち、病斑部分が乾燥して破れることもあるため、家庭菜園では被害葉を取り除くのが基本です。腐敗、ぬめり、異臭、明らかなカビがある葉は利用しません。
農薬を使用した場合は、病斑の程度にかかわらず製品ラベルの収穫前日数などを守ってください。
予防と早期発見のポイント
- 淡黄色〜灰色で輪郭明瞭な病斑を探す
- 病斑の中に黒い小粒がないか確認する
- 古い病斑が乾いて破れていないか見る
- 葉柄と茎の地際も確認する
- 密植を避け、排水と風通しを良くする
- 被害葉や被害残さを畑へ残さない
- 窒素肥料の多用を避ける
- べと病の葉裏の灰紫色かびと混同しない
よくある質問
黒い小粒があれば炭疽病ですか?
黒い粒だけで断定せず、灰〜淡黄色で輪郭が明瞭な病斑、2〜10mmほどの大きさ、古い病斑の破れなどを合わせて確認します。
葉に穴が開いています。害虫被害ですか?
必ずしも害虫とは限りません。炭疽病では古い病斑が乾燥してもろくなり、病斑部分が破れて穴になることがあります。穴の周囲に病斑が残っていないか確認してください。
べと病との一番分かりやすい違いは?
炭疽病は病斑の輪郭が明瞭で黒い小粒が見られます。べと病は初期病斑の境界が不明瞭で、葉裏に灰〜灰紫色の粉状かびが出ることがあります。
翌年も同じ場所でホウレンソウを育てて大丈夫?
多発した場所では連作を避けるのが安全です。資料では、多発・常発地では2〜3年間ほかの作物を栽培する対策例も示されています。


